
僕にとって連覇への道のりは、すごーくすごく大げさに言うと人生の縮図。
人生では多くの事を経験して成長していくけど、
人生を濃縮して味わっている感じがしています。
だって、競技で感じる肉体的な苦痛や精神のアップダウンは、
真剣になればなるほど、連覇を重ねれば重ねるほど、
その感覚が強くなっていくから。
例えば記録がのびた時の達成感、応援してもらえる高揚感、
追い込まれたときの緊張感、味わった事のない胃の痛みなどがそうです。
普通に生活していたら会えないかもしれない自分と
遭遇する事ができます。
それが、フードファイトの一つの楽しみであり、
僕にとっての連覇の魅力なのです。
(スポーツ好きの人ならわかってくれるかな?)
それはフードファイトが、心地よい汗や冷汗、脂汗といった、
他のスポーツでかく汗と同じ汗がかけるって事でもあります。
肉体的にだって、能力やスキルの向上、大会に向けての調整など
スポーツと同じ側面をもっています。
認めてもらうために大いに強がっている時期もあったけれど、
アメリカ選手と話したり闘ったりしているうちに、これはもう
スポーツ以外のなにものでもないなぁと素直に感じています。
試合中に僕は味わおうとはしません。
噛み切る、噛み砕く、飲み込む、押し込む、つぶす、回す・・・そういった
勝つために必要なテクニックの中に‘味わう’が
僕にとってはないからです。
なにより、永遠のテーマが味を離れた世界で試合する事ですし。
今大会のホットドッグは一本目から味を覚えていませんし、
終盤に優勝を確信した後でも、確実に勝つための安全なスピードには
落とさなかったので、自分の考える競技者の姿勢としては
理想に近いと思っています。
多くの人は、それが誰であろうと僕を負かした選手こそが
たくさんのものを得ると考えていたかもしれません。
でも、僕がそうであったように、他の選手も勝って得るものより、
勝つまでの過程で得るもののほうがより多い気がします。
この大会のために一年間努力してきて、12分間を真剣に闘った選手なら
きっと誰もがみんなたくさんのものを得て来年につなげる事と思います。
また、連覇がかかった僕の挑戦だって、試練が多いかわりに、
多くのものを得るチャンスを秘めているはずですから僕も負けじと頑張ります。
強いプレッシャーは、いままで感じていた限界を破る頼もしい力に
かわりますからね。
これから目指す七連覇は、ランスが見た世界です。
実際には癌の克服後の七連覇なので圧倒的にスケールが違いますし、
まともに比較すると自分でランスを侮辱しているようで嫌なのでしませんが。
それでも七連覇までの道のりでどんな経験ができるのか
ドキドキしています。
みなさんも今年の大会は結果がわかるまでドキドキしたでしょ?
今年もまだ試合がいくつか予定されていますから、
是非ドキドキを楽しんでください。
それもスポーツの醍醐味の一つなんですから。
11月、ランス・アームストロング選手を応援に行こうと思います。
応援してくれる人がいる事がどれほど力になるかわかったから。
そしてまた、記録を更新して優勝できるように頑張ります。
誤解がないように補足します。

アメリカの選手は食べ物に対しての感謝はちゃんともっています。
僕がそうであるように、競技に参加する以上、競技で使用される食べ物や
その生産者への感謝の気持ちは本気で勝負をする事、記録をのばす事で
表現したいんじゃないかなぁ。
その分、味については食事で堪能しています。
みんなでおしゃべりしながら食べる時なんてとても楽しいですよ。
その雰囲気だけでお腹いっぱいになっちゃいます。
エリックと食事した時、その少なさもそうだけど、デザートを食べる時に
感慨深げに目をつむっていた事が印象に残っています。
不思議に思って声をかけると、子供の頃のハッピーメモリーといって、
昔お母さんが作ってくれたデザートの味を懐かしがっていました。
実際僕も、競技を離れて普通に食事をすると全然違う感覚になります。
ゆっくり味わって食べられたり、必要最低限の量でごちそうさまっていう権利が与えられている事にとてもホッとしてすごい幸せに感じる時があります。
試合制限時間が終わるまではどんな状況でも、とにかく闘い抜く事に
競技をさせてもらっている感謝の気持ちというか、
使命感か義務感(どっちかわからない)があるからなのかもしれません。
だから、食事では味わって食べていたにしても、理由もなくわざわざたくさん食べようって気にはなりません。
競技をはじめる前、早起きして母が作ってくれるお弁当以外では、
わりとなにげなくしていた食事でしたが、今はもっと‘食べる事’を実感しています。
ただ・・・
味わって食べたり、感謝して食べる事では、食糧の地域格差まではどうにもならない事も感じています。
だからこそ、フードファイトがもっと大きくなって、競技や競技者の得た利益が社会に還元されれば良いなぁって思ってます。