JFKに降りて、イミグレーションを抜けた先に、車で迎えに来た人々がたくさんまっている。
いつもなら、迎えに来てくれた人を探すのですが、このたびでは、そういった人はいない。
初めてアメリカが旅先ではなくて、帰ってくる国になったから。
いるわけもないむかえの人々を興味深くみていたのがいけないのか、無免許タクシードライバーに
こえをかけられた。
僕はこの時、彼が無免許ドライバーとは全く気づいていない。
かれはビジネスカードより一回り程大きな紙に、OFFICIAL TAXI-LIMO RECEIPTと書かれたレシートを僕にみせ、
マンハッタンまでいくんだろ?
と声をかけてきた。
そして頼んでもいなにのに、僕のスーツケースをもつとパーキングまで誘導した
その移動中、彼のボスから電話がなり、ひとり乗客がみつかったと話していた。
今思うとこれも彼の一人芝居の可能性が非常に高いのだけれど。
僕は、キャッシュがまったくなかったので(25セントだけ)、
デビットカードで支払えるかときくと、
もちろんだと、こたえたので、イエローキャブだと勘違いしてパーキングまでついていった。
みせられたレシートも、イエローキャブを連想さえるようにできていたし、旅の疲れもあったのかもしれない。
でも、そこにあるのは、車のフロントがぼこぼこにつぶれた、汚らしい車だった。
中をのぞいても、カードをよみとるリーダーもなければ、メーターもない。
ここまでくれば無免許タクシーだと誰でもわかる。
わかっていながら、僕はのった。
いまだにNYで、こうした違法な仕事をする人間はたえない。
僕は値段も聞かずに乗り込んだ。
二年前のクリスマスに高い金額を支払わされた苦い経験があるので、自分の過去とおさらばするためには、どうせ乗るならこの経験を胸にきざむことにした。
彼は、会話を盛り上げるような自然さで、こちらの情報をひきだそうとする。
ホテルのアドレス
行き先を聞くのは当然なのだけrど、”ホテルの”アドレスを教えてと言ってくるのがうまい。
旅行者なのか、NY在住なのかを、こちらからしゃべらせるためだろうと思う。
僕はホテルではないことをつたえると、NYに住んでどれくらいたつのかをたずねてくる。
彼らにとっては、生活になれていない人間、限りなく旅行者に近い人間なら、請求する金額を高めにでもしたいのだろうか。
僕は一ヶ月前に、引越をしたことをつたえる。
すると、だれかとシェアしているのか、一人で払っているのかをきく。
お金に余裕のある人間かどうかをたしかめるのと同時に、NY生活の長い友人の存在の有無を確認しているのかもしれない。
一人で住んでいると伝えると、今度はNYに友人は多いのかと聞いてくる。
僕は多いとこたえる。
マンハッタンまでの長いたびで、彼が必要な情報はこれくらい。
あとは、結婚しているのか、ファミリーはこっちにいるのかも聞かれた。
チラチラとした目線の先には、僕のパスポートがある。
どこの国の人間なのかを確かめたいらしい。
シンガポールエアラインのランディング後にイミグレーションを通ってきた事実から、彼は僕がシンガポールからきたことは知っている。
しかも、英語のレベルから完全に英語圏以外の人間なのはバレバレだ。
どの国の人間かを正確につかみたいらしい。
実は僕のアクセントは通常の日本人のアクセントとはちょっと違う。
あまりに学校の英語の授業で寝ていたため、通常の日本人の通るべき道をあゆんでいない。
しかも、容姿も日本人っぽくないらしく、日本でもアメリカでもたまにミックスなのかと質問される。
日焼けしていない部分の肌は、白人みたいに白いし、髪質は細くてやわらかく、光にあたると少しブラウンだ。
先日も、シンガポールで、Naguraに攻撃された。
骨格やまつげの長さが、日本人の血だけじゃないと言われても仕方ないと。
攻撃と表現したのは、自分が日本人であることに誇りをもっているからで、断じてハーフに対する差別意識はありません。
この違法ドライバーも、ミックスなのかと質問してきた。
うまい質問の仕方だなぁと感じながら、僕は日本人であることは伝えずに、ただNOとだけこたえた。
結局、JAPANの文字が見えないようにしたパスポートからは、僕がどこの国の人間課は確認できないまま、彼は僕の家の近くで車をとめた。
さて、お楽しみの請求金額だ。
正規料金に近ければ、何事もなく降りれるので、そう願っていたのだけれど残念ながら、彼は欲が深かった。
209ドルの請求。
フェミニンでソフトな印象を与える僕は、よく人になめられる。
彼も僕からなら高いお金をとれると判断したようだ。
ちなみに正規の基本料金(チップ含めず)は、45ドル。
金額をみて一言だけいった。
本当?
するとさっきまで優しくてナイスだった彼は、殴りかかりそうな勢いで怒鳴ってきた。
つう